言語聴覚士(ST)
ある日突然コミュニケーションの手段が喪失してしまったら、どんなに不安だろうか。
などと考えたことはないでしょうか?
世の中には、耳が聞こえにくく言葉がよく聞き取れない。
あるいは、わかっているのに言葉を発生できないなど、言葉や聴覚に障害をもつ人たちが、たくさんいます。
こういった障害に対し訓練や検査を行い、機能回復や障害を和らげる手助けをするのが、言語聴覚士の仕事です。
専門用語で、ST(スピーチ・セラピスト)とよばれます。
ひと日に言語障害といっても、障害の程度は、人によりまったく千差万別です。
具体的には、音声障害、構音障害、吃音、早口症、聴覚障害、言語障害、脳性まひにともなう言語障害などがあります。
言語聴覚士の仕事は、障害への冷静で正確な理解から始まります。
最初に、聴覚や音声、発音の状態がどのようになっているかを、知らなければいけません。
検査と治療は、医師や歯科医師ら、ほかの医療専門職との共同作業で進められることも多くなります。
医師らと相談しながら、まず言語聴覚士が、障害の程度を判断するのに必要な項目についての検査をします。
その検査結果に基づき、診断を行うのは医師や歯科医師の仕事になります。
医師が、通常の医療的な治療だけでは、回復が困難だと判断した場合には、言語聴覚士によるリハビリのプランが加わります。
ちなみに法律には、言語聴覚士の仕事の権限について、「医師の指示」が必ず必要とは盛り込まれていません。
特に、教育や福祉現場では、言語聴覚士の裁量権が大きく認められています。
リハビリを実行するうえで、もっともむずかしいのが、障害者側の意図をくみ取ることです。
治療を受ける側の権利に配慮し、個々に合ったリハビリ方針を確立できるかが、腕のみせどころです。
また、機能回復をめざしながら、現状を改善していく対策も大切です。
補聴器などの補助機具の使用についても、指導していきます。
家族との連絡、説明も欠かせません。
障害者が家庭で過ごす長い時間を考えれば、家族の協力を得るのも、リハビリ指導の一環といえます。
障害者本人の日常のハンディキャップを少しでも軽くするため、コミュニケーションの工夫などをアドバイスします。
収入上がり傾向
「言語聴覚士」というのは、比較的新しい言葉で、資格をさすと同時に職名でもあります。
この言葉の誕生以前は、言語療法士とか、言語治療士、臨床言語士などとよばれていました。
これらは民間の団体が、独自規定で定めた資格の名称です。
1997年に言語聴覚士法が制定され、国家資格となったことで、言語聴覚士は、ようやく一般に専門技術者としての地位を確立したのです。
以前は言語聴覚士の活躍できる場所は狭い、限られた医療、福祉機関でしかありませんでした。
一つには、資格の問題がネックになり、言語聴覚のリハビリに対し、医療保険から支払われる診療報酬が、低く抑えられていました。
そのため、人件費に比べ収入が低い言語聴覚士の採用には、どこも消極的でした。
国家資格化で報酬の水準が引き上げられたため、ここ数年言語聴覚士を採用する施設が、次第に増えてきています。
保健所の検診にも参加
職場は、おもには、大学病院や総合病院、リハビリテーションセンターなどの保健医療施設です。
今後、地域リハビリテーションの充実にともない、一般開業医や診療所などにも採用は広がっていくと考えられます。
保健所や保健センターでも、同じことがいえそうです。
子どもの発達などを調べる検診業務に、言語聴覚士が加わる自治体が増えてきています。社会福祉施設での採用もどんどん増えています。
これまで言語聴覚士の配置が義務づけられていたのは、難聴幼児通園施設と聴覚・言語障害者更生施設の2つだけでした。
参考までに、設置基準に示された法的なよび方は、難聴幼児通園施設の場合、その役割別に「言語機能訓練担当職員」、「聴能訓練担当職員」。
聴覚・言語障害者更生施設では、「聴能訓練師」
言語聴覚士は人手不足?
日本には、現在およそ62万人とも100万人ともいわれる言語聴覚障害者がいます。
専門家の不足のため満足なリハビリを受けるのが困難だった患者団体などは、
早くから国家資格の制定を求めていましたが、業務内容や権限、試験内容をめぐって調整が続き、法制化が遅れたという経緯があります。
セラピスト医療の先進国アメリカと単純に実情を比較してみましょう。
まず、人口単位でみてみると、日本は総人口1億2,000万人に対し、言語聴覚士は約400人。
アメリカは2億3,000万人に対し、7万4,000人。10万人あたり、日本は4.3人の割合。アメリカは32.2人です。
もし、いまあなたが失語症などにかかってしまったら、アメリカに比べ、時間をかけた専門治療を受けるのは、まだむずかしそうです。
とされていますが、いずれも言語聴覚士をさしています。
資格の法制化で徐々に、理学療法士、作業療法士なみに、施設の重要スタッフとして、認知されていくのは確実です。
言語聴覚士の働く社会福祉施設には、言語聴覚士に該当する職員の配置が義務づけられている2施設以外に、肢体不自由児施設や重症心身障害児施設などがあります。
これに加え、高齢者のための社福祉施設でもニーズが高まってきています。
平均寿命の延長により、脳血管障害などによる高齢者の言語障害者が増えてきているのです。
施設ごとに差はありますが、一部の特別養護老人ホームや養護老人ホーム、デイサービスセンターなどでは、すでに言語聴覚のリハビリサービスを実施しています。
まだわずかですが、研究機関や医療機器メーカーなどにも、言語聴覚士が勤務し、活躍しています。
高齢化のため、老人性の難聴は年々増える傾向です。
適当な補聴器を開発・普及するためのスタッフの1員として、言語聴覚士を採用するメーカーも出てきています。
販売店にあっては、利用者に合った機器の説明ができる人材として、専門の知識が重宝されています。
ニーズ増しても福祉施設の求人は少ない
法制化によって、「診療の補助行為」にあたる仕事は、国家資格である言語聴覚士の有資格者以外行えなくなりました。
補聴器などの補助機具の導入や人工内耳を埋め込む手術の相談や指導もその一つです。
ですから、国家試験導入以前に働いていた人たちにとっても、国家資格の取得は不可欠になっています。
現在、従来の民間資格のままで働いている人も合わせれば、医療、福祉、教育の分野で活躍する言語聴覚上は約4,000人になります。
うち、医療分野で働く人が約2,000人、福祉分野が600人、教育分野が1,400人となっています。
もちろん、これから就職する人たちは、同家資格は絶対に必要です。
資格なくしては、何も始まりません。
国家資格の誕生以降も、慢性的な人材不足傾向は、変わっていません。
医療分野に限っていえば、本格的な訓練を愛する障害者に対し9,000人の言語聴覚士の配備が必要だといわれています。
現状では7,000人も不足していることになります。
東京都内のある養成校を卒業した言語聴覚士の進路をみると、医療関係が大半を占めていました。
新卒者はほとんど、学校の推薦で就職を決めています。
募集や採用条件、試験の有無は、各施設ごと違います。
公立の病院は、公務員としての採用ですから、資格以外に各自治体の採用条件を満たしていることも必要です。
社会福祉施設では、配置が義務づけてられている施設はごくわずかであることから、当然、求人も限られます。
配置義務がない一方で、福祉施設でも言語聴覚のリハビリに対する、利用者のニーズは増えています。
しかし、人件費とのかねあいで、採用を見合わせている施設が多くあります。
それでも、以前に比べ全体に採用の例が出てきています。そういった施設では、非常勤者を採用する方法をとっています。
言語聴覚士と、週何回かのリハビリ契約を結んで、対応しています。
時給契約だと、理学療法士や作業療法士なみの、4,000円から5,000円ぐらいが基準になっているようですが、これもいろいろです。
給与体系は医療機関と社会福祉施設とで少々異なりますが、常勤採用の場合は、地方公務員なみかそれ以上になります。
たとえば、短大卒20歳では、だいたい16万700円が地方公務員の有資格者の基準ですから、最低ラインとしてそのあたりをめやすにしてみてください。普通17方円ぐらいです。
私立の医療機関ではそれより高くなります。
当然、こちらも施設ごとの規定によるため、ずいぶん開きが出ます。
また、数はまだまだ少ないのですが、一部には開業した言語聴覚士もいます。
経験を積めば、自分の治療所をもつ夢もかなうかもしれません。
資格を取るには
専門学校や大学で学ぶ
高校卒業後、養成のための大学、短大、専門学校で3年以上学べば国家試験を受けられます。
また、大学などで2年以上指定の科目を学ぶか、高専で5年以上指定科目を学んだ場合は、養成学校で1年以上修業したのち受験可能。
大学での修業が1年、高専での修業が4年ならば、養成学校での修業は2年必要になります。
一般の大学卒業者は、養成学校で2年以上の修業が必要です。
厚生大臣の認定を受けて
外国の養成学校を卒業したか外国の言語聴覚士免許の取得者は、日本の養成学校で学んだのと同等の技術、知識があると厚生大臣が認定すれば受験できます。
5年以上の経験者は講習受け
すでに病院や診療所で業務を行っている人は、5年以上の経験があれば、指定講習を受けたのち国家試験が受けられます。
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