作業療法士について
「作業」とは人間が生活するうえで行う、すべての行動のことを指します。
食べる、服を着る、寝床から起き上がる、歯磨きをするなど、生活にかかわることはすべて作業としてとらえられます。作業とは生きることそのものといえるでしょう。
何らかの障害によって、このような作業を行うことが困難になった人に対して、ふたたび行えるように手助けをするのが作業療法士の仕事です。
たとえば、手に麻痺のある人が指を動かす訓練をするのに、単調な指の曲げ伸ばしだけでは苦痛なだけです。
そこで、組みひもを編むという「作業に置き換えれば、ひもをつかんで結うというような複雑な指の動きも、訓練を意識せずに行えるようになるでしょう。
このように作業を治療に用いることを作業療法といいますが、患者の症状や心情、
または趣味や興味を考慮して、方法を作業療法士選ぶことが作業療法士の仕事です。
また、先ほどの例でいえば「どのようにひもを組み合わせようか」と作業の方法を考えることは、思考力を回復させることにつながりますし、
作業の達成感は、患者によろこびと自信をあたえ、考えをポジティブにします。
こういった、作業療法の精神的な効果は、治療に対しても前むきな姿勢を生み出すのです。
そして、作業が思い通りにいかないときは、ひもをひっかける道具を考え出したり、手だけでなく日も使ったりと、患者が自分で工夫するでしょう。
こういった経験から、現在自分が持っている障害が、たとえこの先、完全に治ることはなくても、工夫次第で生活していけるということが分かれば、今後の生活にも意欲が持てます。
すなわち、作業療法士は作業能力だけではなく、患者の気持ちのケアをする仕事でもあるのです。
このほかにも、障害のある人が自宅で不自由なく暮らせるように、手すりをつけたり、
段差をなくすなどの住宅改修の提案をしたり、
交通手段や公共の施設の使い方を教えたりといったことも行います。
患者の活動範囲を広げ、人生を前むきにさせることも作業療法士の大事な仕事です。
作業療法の起源は古代エジプト文明やギリシア時代にさかのぼるといわれています。
当時の人びとは、身体と精神が密接に関係していると考え、精神を病む人びとに対し、医師が身体を使う楽しい作業を勧めたといわれています。
古代ギリシャの医師、ヒポクラテスは、レスリング、乗馬、肉体労働を推奨しました。
同じく、ガレンという医師は土掘り、農園作業、魚釣り、木工作業などを治療として処方し、
「仕事をするということは、自然の最善の医師であり、人間の幸福に不可欠なものである」
と提唱しました。
これらが、作業療法の考え方のはじまりとされています。
その後も、少しずつ研究が進められ、18世紀から19世紀にかけて、作業療法は精神病から結核治療の分野まで広がりました。
身体障害に対する作業療法は、第1次世界大戦のときに米国の若い作業療法士たちが、けがや病気を迫った兵士たちに編みものやビーズづくりを用いたリハビリを行ったことがきっかけで注目されるようになりました。
日本ではじめての作業療法は1901年に、東京の巣鴨病院で、呉秀三によって行われました。そのときは、精神病患者に対する治療法として、裁縫などの作業が用いられました。
また、身体障害を対象にした作業療法は、1942年に整肢療護園(現、心身障害児総合医療療育センター)で、
手足の不自由な子どもに対して、日常生活動作の訓練が行われたのがそのはじまりです。
その後、作業療法は次第に体系化され、1963年、日本リハビリテーション医学会が発足しました。
その発足とともに、作業療法という名称が定められて、現在にいたっています。
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