作業指導員:職業指導員
身体障害や知的障害があって、障害のない人たちと同じようには就職ができない人たちがいます。
作業指導員、職業指導員は、そういう人たちに技術を身につけてもらい、自立した生活ができるように手助けします。
潜在的にもっている能力を引き出す仕事、といったほうがわかりやすいでしょう。
技術指導はそのための、一つの手段であると考えてください。
もちろん、それには障害者一人ひとりへの理解が必要になってきます。
生活全般にかかわり、相手の立場を尊重したうえで、いっしょになって自立の方法を模索していくのです。
作業指導員と職業指導員という二つのよび方ですが、たんなる制度上の区別でしかありません。
国が定めた施設の設置基準によるもので、ここで定められた必要な配置人員の名称が、作業指導員だったり職業指導員だったりするわけです。
実際の仕事内容や待遇ではたいした差はなく、施設では、どちらも作業指導員とよばれることが一般的なようです。
作業指導員の仕事は、利用者の障害の種類や度合い、施設が実践している作業種目によって違ってきます。
作業種目で多いのは木工や陶芸、農作業などです。
しかし作業の差こそあれ、施設内外の作業療法士や医師、生活指導員らと連絡をとりながら、利用者一人ひとりの適性を見極めていくという役割は、どこでも共通しています。
最終的には利用者が社会人として生活できることが目標です。
労働管理や販売開拓も仕事のうち
もう一つ大切な仕事があります。
施設運営に携わる経営的なかかわり方です。
まず、一般企業と同じく、現場の生産と労働の管理が必要になってきます。
利用者が慣れない作業で事故を起さぬように、常に職場の安全に注意をはらいます。
作業自体の企画や作業工程のプログラム、さらには即売会のようなイベントや製品の販売ルートの開拓、事務手続きなどもこなしていかなくてはいけません。
福祉的な要素と、企業活動的な要素の双方に携わるむずかしさはありますが、その分やりがいも大きい仕事です。
活躍の場
心身に障害をもつ人たちが利用する、さまざまな施設で働いています。
1997年10月現在、全国の社会福祉施設で働く作業指導員の数は1万6,558人います。
作業指導員が圧倒的に多いのは、知的障害者援護施設の1万2,000人です。
全体のほぼ3分の2にもなります。
なかでも、知的障害者更生施設(入所、適所)と知的障害者授産施設(入所・適所)の4タイプの施設に集中しています。
知的障害者更生施設とは、18歳以上の知的障害をもった人を入所させ、社会復帰や自活のための訓練を行う施設です。
当初はわりと軽度の障害者を対象にしていましたが、1968年に「重度棟」を設けて以来、比較的重度者の割合が増えてきています。
これに対し、知的障害者授産施設の利用者は、日常生活がおおむね自分で行え、筒単な作業ができる人たちです。
ですから授産施設のほうが、利用者の就労の道を開くという目的をより強く打ち出しています。
施設内に作業施設を設け、そこでの作業に対し 一定賃金が支払われています。
入所者に生活の場のみでなく、労働の場をも提供しているのです。
このほか、全国に大小あわせて4,500か所を超える共同作業所もあります。
入所者の能力を高める援助以外にも、福祉事務所や家族との連絡業務も行っています。
家庭と施設の両輪で支援を進めていけるように、保護者との協力関係をうまく築くことも大切です。
知的障害者援護施設に次いで働く人が多いのが、身体障害者援護施設ですが、その数はわずか280人ほどです。
ほかには、保護施設や精神障害者社会復帰施設、老人福祉施設などがあります。
利用者の生活全般にかかわる作業指導員の業務は、生活指導員とかなり重複します。
そのため、作業指導員が単独で募集されることはまずなく、欠員が出た時点で生活指導員とあわせて募集されます。
いまのところ作業指導員になるための特別な資格はありません。
が、施設が個別に行う募集のなかでは、作業所の業務に対する専門的な経験や知識や運転免許の取得が必須となる場合があります。
特に運転免許は、多くの施設で採用の必要条件にあげられています。
専門技術のほうは、陶芸や農業、園芸、木工芸など施設によりさまざまです。
厚生次官の通達では「指導する業務について相当の経験及び技能を有する者」、「高卒後専門学歴を含め2年以上の実務経験」などと定めています。
しかし、これは厳格な条件ではなく、技術程度は施設の事情によりいろいろです。
現在すでに、作業指導員として働いている人たちのなかには、教員免許取得者が約3割もいます。
社会福祉主事任用条については、現役の作業指導員の2割以上の人が満たしています。
いずれにせよ障害の重度化が進み、現場ではより専門的な技術が要求されるようになってきていますので、資格の有無が重要視されるようになってくるでしょう。
現役の作業指導員にきいてみると、社会福祉士や精神保健福祉士などは、これからの採用の際には有効な資格になっていくだろう、ということでした。
勤務体制は、適所施設だとだいたい日勤型。午前8時から午後5時までで、夜勤はありません。
日曜、祝日と指定された土曜日は休みです。入所施設だと、夜勤もあって、4交代制の勤務になります。
1か月に4回から6回の夜勤があります。
収入に関しては、資格が問われない分だけ、専門性を認められず、給料もあまり高くないというのが現司も東京都の民間施設の多くは、都職員の給与水準にそっていますので、
大卒の新規就職者で約18万7,000円。
これを若干下回るところもありますが、大きな差はありません。
また、共同作業所など法人化されていない場合、県や市の補助金が少なく、人件費にかけられる割合が厳しくなっています。
それゆえ、法人施設との合併などをめざす動きもあります。
現状では社会保険、厚生年金への加入もむずかしい状態のところもあります。
福利厚生面では、法人施設に比べて不利な条件が多くなるでしょう。
作業指導員の人たちから必ず聞く言葉があります。
「辛抱」です。
そう、とにかく辛抱が必要な仕事です。
いいかえれば、気長に温かく施設利用者の成長を見守っていかなくてはいけません。
同じ場所で作業する人でも、障害の程度や年齢など、取り巻く環境がみな違います。
どういう援助をして、意欲を引き出していくかがむずかしいところです。
家族や担当医師などと相談しながら、手探り状態で個々の適性を探っていきます。
たとえば、作業中にかんしゃくを起こす適所者がいたとします。
まず、事故が起こらないように、気を静めてその場を処理しなくてはいけません。が、現場の処理だけでは、作業指導員の什事は終わりません。
これを克服しなければ、技術は先に進んでいかないのです。
しかし、問題行動が病気なのか、それとも本人の甘えなのかを見極めることは容易にはできません。
時間をかけて、何度も壁にぶつかり、問題の根を一つひとつ抜いていくのです。
また、就職先の開拓なども思うようには進みません。
施設長などといっしょに企業を訪問しても、なかなかいい返事をもらえません。
特に一般企業への就職は、身体障害者雇用に比べて、知的障害者はだいぶ不利な立場にあります。
それだけに、利用者の自立が見えてきたときの喜びは、はかりしれないといいます。
数々の「辛抱」を支えるのは、このときの喜びなのです。
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