生活相談員:生活指導員
実際に、家族が老人福祉施設などでお世話になった経験がある人なら、すぐに「生活相談員」の業務を想像できるかもしれません。
利用者にとっては、介護職員と並んでもっとも身近な存在だからです。
生活相談員は、老人福祉施設などを利用する人たちへの相談窓日ともいえる重要な業務を預かっています。
少し職名についてふれておきます。
介護保険法の制定を契機に、高齢者が利用する福祉施設では、従来の「生活指導員」から「生活相談員」に改められました。
その仕事は、高齢者の施設と障害者の施設で働く場合とでは、大きく異なってきます。
ここでは、前者を「生活相談員」、後者を「生活指導員」とそれぞれ分けてよぶことにします。
老人福祉施設での、仕事は実に多方面にわたります。
利用者の入所から退所までのあらゆる手続きにかかわります。
利用者とは一生のつきあいになるのです。通夜や葬式への参列も仕事のうちです。
生活相談員は、新規利用申し込み者があれば、ただちに家庭を訪問し、事務手続きも含め入所決定までの調整作業に入ります。
それぞれの心身や家庭の実情に応じた援助計画を示し、相談にこたえる一方で、施設が提供できるサービスの内容や実情などについても、あらかじめ理解してもらえるように努めます。
施設内では、巡回が日課です。
入所者の状況把握や介護職員との情報交換も大切です。
また行政サイドである福祉事務所、医療サイドの病院など各協力機関との連携をはかる橋渡し役もします。
知的障害者援護施設で働く生活指導員は、入所者の日常生活にかかわる生活介助や支援が仕事の中心になります。
食事やトイレ、着衣、入浴などを手助けしながら、日常の生活習慣が身につくように支援していきます。
寮母の仕事と大きく違うところは、本人の能力を少しでも引き出して、自立した生活をしていけるように、施設内での作業指導なども担当していくことです。
そのほかには、行事計画や入所者の家族との連絡も欠かせません。
知的障害者援護施設が最多
生活相談員、生活指導員が活躍している職場は、大きく分ければ、高齢者のための施設と障害者のための施設です。
では実際にどのような施設にどのくらいの人が働いているのか、もう少し細かくみてみましょう。
もっとも多く働いている施設は、知的障害者援護施設。専任の職員が約2万5,000人働いています。
知的障害者援護施設とは、7タイプに分かれる知的障害者のための施設の総称です。
このなかでも、入所型の知的障害者更生施設には、最多の1万9,000人ほどが働いています。
以下、適所型の知的障害者援護施設、知的障害者授産施設などがあります。
知的障害者援護施設に次いで多いのが、老人福祉施設。約1万3,500人が勤務しています。
その4割弱にあたる約5,000人は特別養護老人ホームで働いています。
ほかに老人デイサービスセンター、養護老人ホームなど。
さきほどは、高齢者の施設と障害者の施設に分けて、仕事の内容を紹介しましたが、この項であげた施設を見回しただけでも仕事の内容はずいぶん違ってきます。
実際に仕事を探す際には、職名だけで判断せず、各施設の性格などを十分に自分で調べてみたほうがいいでしょう。
現代社会では、「高齢者の介護は地域社会全体で」という考えが定着しつつあり、介護にかかわる職種の求人はどこでも伸びていますが、生活相談員はどうなのでしょう。
まず、施設内での生活相談員の人数を介護職員と比べてみると、かなり少ないことに気がつきます。
直接介護に携わることより相談援助の仕事が主業務の生活相談員の枠は、もともと少ないのです。
施設の規模により、開きはありますが、だいたい1施設に1〜3人程度。
特別養護老人ホームの場合、100人の利用者に対し、配置が義務づけられる生活相談員の数は1人です。
今後とも、急激な求人増は見込めませんが、少しずつ需要は増してきています。
まず、老人福祉施設の生活相談員をめざす場合、特別に必要な資格はありません。
一応の規定としては、社会福祉主事の任用条件を満たすことが求められています。
今後は社会福祉士資格(または受験資格)をもっていることが採用条件になっていくでしょう。
また、送迎業務のための普通自動車免許を求められることもあります。
いずれにせよ、施設のニーズによって、細かく条件が変わってきます。
新規卒業者の採用は、まったくないわけではありませんが、かなり少ないと思ってください。
かりに、採用されたとしてもいきなり現場を任されることはなく、事務仕事やベテラン相談員の補佐からのスタートになります。
実際に、施設で欠員が出たり、新たな施設を立ち上げるときには、介護職の仕事や実務に精通した介護職員や社会福祉士などから、適任者が選ばれる場合が多いようです。
勤務形態はほぼ日勤です。
老人福祉施設における採用時の基本給は、だいたい社会福祉主事任用条件を満たしているか介護福祉士資格をもつ介護職員に相当する額です。
この条件で、東京都内の民間施設の平均給与をみてみると、短大卒の20歳で、16万700円です。
採用枠大きくても難関
障害者のための施設のほうは、老人福祉施設に比べ、採用の幅はやや広がります。
施設での作業指導も含め、利用者に対して、生活全般にわたる直接の支援がおもになるからです。
しかし、採用人数が多いからといって、新規卒業者にとっては難問であることは、こちらも変わりません。
決まって必要な資格はありませんが、知的障害者更生施設の場合、生活指導員には特別に任用の条件が定められています。
この任用条件は、大学で心理学、教育学、社会学を履修しているか、高校を卒業し、知的障害者のための施設で2年以上の実務経験を積んだ人であれば、満たすことができます。
仕事の性質上、小・中・高校の教員免許取得者も任用条件を満たしているとみなす施設もけっこうあります。
また、介護福祉士資格があれば望ましいとする求人も見かけます。
生活相談員の仕事の内容は、だいたいわかったことでしょう。
ならば、ここで、どうして自分がこの仕事につきたいのかもう一度考えてみてください。
繰り返しいうようですが、今後とも活躍のフィールドが広がっていきそうな老人福祉施設などでは、特に人と人、組織と組織をつなぐ調整能力が問われます。
他人に、わかりやすく施設の概要を説明して同意してもらう。
あるいは、利用者個別への、福祉サービスのコーディネートを手がける。
これらの仕事を円滑にこなしていくには、あいさつや返事、態度といった一般的な常識が、確実に身についていることが大前提です。
加えて、豊かな介護に関する知識が求められるのです。
資格以上に社会経験が重視されます。
そこで、卒業後の目標をすでに生活相談員になることに置かず、まず高齢者介護に携わる仕事につきたい、と考えてみたらどうでしょう。
自分のめざす職業を、大きく「福祉の仕事の一環」としてとらえてみることも必要です。
第一目標として、介護の現実について 勉強できるもっとも身近な職業を選択し、そこで実務を覚えながら、必要な資格を取得し勉強を重ねるのです。
それには、介護職員などが最適だと思います。
もちろん新卒採用をめざすことも一つの道ですが、じっくり経験を積むことも、けっして回り道ではありません。
地域の利用者にとって、信頼のおける相談者になるにはどうしたらいいか。そこから仕事探しを始めてみましょう。
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